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episode 001

賑わう食堂

2099年地球防衛戦勝利の夜明け

鉄と土の匂いが染み付く地下シェルターは、初勝利の歓喜に包まれていた。ケイは大繁盛たこ焼き店「タコバスターズ」で名物ドリンコを片手にDOX入隊への緊張を募らせていた。
七年前の二〇九二年、突如現れた未知の生命体により人類の半分以上が殺戮された。残った人類は各地の地下シェルターに隠れ、為す術もなく、シャオ星人に見つからないよう密かに生活することを余儀なくされた。翌年二〇九三年、国際連合(UN)が事実上の地球政府になり、対シャオ特務機関DOX ー Destroyer of Xiaoが併設される。ここでは打倒シャオ星人を目指し武器の開発、軍隊の組織、作戦の遂行を行い人類に希望を与えていた。同年、人類はDOXによる進んだ技術と宇宙人の徹底的な研究をもとにシャオ星人との地上戦を展開する。多くの犠牲を出しつつも約6年をかけ、なんとか地上戦に勝利し、戦いの場を地上から宇宙に移すことに成功した。

倒される人類

ケイは六年前、当時一三歳の頃に母親をシャオ星人に連れ去られた怒りからDOX入隊を心に誓っていた。父と兄弟のいないケイは、幼馴染のハオレンの両親に引き取られた。ハオレンの両親はあの人気店「タコバスターズ」のオーナーで、ここでアルバイトをしながら三年間の厳しい訓練を耐え抜き、ようやく入隊基準である一九歳に達したいま、ハオレンと共にDOXへの入隊を許された。ケイだけではなく、毎年数千人の若者たちがDOXへの憧れ、そしてシャオに対する怒りと憎しみから入隊を夢見る。彼らの多くがケイと同じく家族や友人、大切な人失った。

「ハオレンは気が弱いから、頼んだわよ、ケイ」

声の方を振り向くと、涙をこらえながらなんとか笑顔を作ろうとするハオレンの母がいた。

食堂で話す二人

「うん、何があってもハオレンだけは俺が守る。おばさんいままでずっとありがとね」

ケイはそう言って大切なもうひとりの母親を抱きしめた。

「あんたも絶対死ぬんじゃないよ。」

そう言うとケイの背中を豪快に叩いた。

「さあ、今日は人類初勝利記念日よ。若い衆は店のおごりさ、『シャオレッド』でも『惑星ブラック』でもなんでも飲みな。たこ焼きも『シャオウィンナー』も『シャオ辛』もみんな奢りだよ」

繁盛店「タコバスターズ」は夜通しいつも以上に賑わった。ハオレンの父は客席が見渡せる厨房の鉄板でリズムに乗りながらたこ焼きを回し、人々はその完璧とも言えるたこ焼きを頬張った。ケイとハオレンは明太子とマヨネーズが絶妙に合わさったソースをたこ焼きに満遍なく贅沢に塗りたくり地下ネギを豪快に乗せ、これを三口で完食し、油たっぷりの喉を名物DOXドリンコで洗い流した。

「とうとう明日だね」

ハオレンは空の瓶を口の上で逆さにするケイにそう言った。

「なんだ不安なのかハオレン。この三年間の厳しい訓練を思い出せ。今日だって人類が勝利したんだぜ。怖いことなんかひとつもないさ。おれは母さんの仇を取るそれだけだ。そんな顔せずによ、今日は飲もうぜ!」

ケイは沈んだハオレンの肩に腕を乗せ、宇宙ビールを求め、客席を徘徊するのだった。

次の朝は忙しく始まった。DOXの集会所には今年も二千人を超える若者が入隊式
のために集まっていた。ケイとハオレンも汚れひとつない新品のDOX制服に身を包み他の入隊生に紛れていた。

軍の広場に集まる入隊生

「諸君!私はDOXの指導最高責任者にして教官のビッグGだ。訓練生のころに面倒を見たやつもちらほらいるな。昨夜はタコバスターズで羽目を外した者たちが多くいるのはすでに承知済みだ。そこのお前なんて真っ青な顔してやがる。今日からはもお甘ったれたことはできないぞ。今ここにいるお前たちは兵士だ。地球のために命を捧げ平和をもたらすデストロイヤーたちだ」

そう言って教壇の上にあがった男は、丸太のように太い腕を組み、野生の動物のような鋭い目つきをしながら不自然に口角を上げ入隊生を見渡した。剃り残した髭はまるで荒涼とした地上の表面のようだ。入隊生の多くはバツが悪そうに、どうにかこの大男と目線をそらそうと必死になっていた。ケイは男の後ろでたなびくDOXの旗をまっす正視しながら胸の中で闘志を燃やしていた。これから始まる過酷な試練を知る由もなく。

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